277 標高観測の革新間近~航空重力測量終了~
衛星測位の発達により、水平位置の観測は飛躍を続けてきました。 高々、数万円のGNSS受信機を購入すれば、センチメートルオーダーで水平位置を観測できるようになりました。これは、ご存じのとおり、単にGNSS衛星からの電波によって水平位置を観測しているだけでなく、固定局で受信した測位電波との干渉測位を行うとともに、固定局が経緯度原点と整合させてあるためです。 センチメートルオーダーとまで言わなくとも、数メートルオーダーでいえばスマートフォンを所持していれば観測できます。幼児や幼い子供及び高齢の方の一部を除けば、国土地理院が掲げてきた「いつでも・どこでも・誰でも位置情報を簡単に利用できる社会」が実現しつつあります。 そのような中、水準測量だけは、相変わらず尺取り虫のごとく、考えられないほどの職人的な手法によって標高を測定しなければなりませんでした。しかし、2週間ほど前の5月24日、公共測量における水準測量の終焉が国土地理院によって発表されました。 注:地殻変動を検出するための精密水準測量は、当面続くものと思われます。これはこれで格好いいですが、この精密水準測量もいずれは合成開口レーダによる方法に変わっていくのでしょう。 5月24日、次のURLのとおり、国土地理院は「4年間にわたる国内初の全国の航空重力測量が終了。標高の測り方を一新します」という発表をしました。 https://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/buturisokuchi_202305.html 2019年から4年間かけて実施してきた航空重力測量が終了し、その結果に基づいたジオイド・モデル(発表では「標高基準」)を今年度中には試験公開するとともに、翌年の2024年度中には「GNSS標高測量」マニュアルを公開するそうです。 水準測量成果とGNSS測量成果との差分等からの疎らなジオイド・モデルから、より精度が高く均質なジオイド・モデルへの転換です。 試験公開予定のジオイド・モデルの精度は、3cm以内ということが確認されています。 さらに、「これまで水平方向のみに導入されていた地殻変動補正を標高にも導入し、日本列島の激しい地殻変動による不整合も解消します」としています。 安価なGNSS受信機があれば、水平位置に加え、標高も、それなりの精度で測れる時代を迎えつつあ...